税務最新情報
2023年07月10日号 (第474)
所得控除について
みなさん、こんにちは。暑い日が続きます。体調管理に気をつけましょう。
今回は政府税制調査会からの答申で、給与所得控除の見直しが提言されたこと、また5月に扶養控除の見直し検討などの話題があがっていたので、それに関わる話として所得控除の影響について説明していきます。
扶養控除の見直し
今年5月に政府は「次元の異なる少子化対策」の柱として、高校生にも児童手当を給付し、代わりにその期間の扶養控除について見直すとの報道がされました。
平成22年に15歳以下の子供を扶養する保護者に「子ども手当」を導入し、一方で平成23年分の所得税から16歳未満の扶養親族に対する扶養控除が廃止されており、今回の見直しも同じ構造となっています。
給与所得控除の見直し
また7月になって報道されましたが、政府税制調査会の中期的な税制のあり方を示す答申では、以前にもお知らせした退職金課税の見直しに加え、給与所得控除を見直すべきとの提言がなされました。
給与所得控除には、以前は上限が設けられていませんでしたが、平成24年度税制改正により平成25年から給与所得控除の上限額が245万円とされ、さらに平成26年度税制改正により平成28年分について給与所得控除の上限額230万円、平成29年分以後給与所得控除の上限額220万円、さらに平成30年度税制改正により令和2年分以後は上限額195万円と、上限額が段階的に50万円も引き下げられています。
実際に改正が行われるまで詳細は不明ですが、今回の答申のニュアンスだと上限額の引き下げではなく、全体的に給与所得額を縮小しそうな流れと読み取れます。
所得控除の影響
さて、扶養控除も給与所得控除も課税所得金額の計算に影響します。給与所得控除については、具体的な縮小幅が想定できませんが、16歳から18歳の扶養控除がなくなる場合、38万円の控除額の減少となります。所得税は超過累進税率なので、課税所得の金額によって、下記の通り影響が出ることになります。
課税所得金額 | 所得税率 | 増加する所得税額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 19,000円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 38,000円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 76,000円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 87,400円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 125,400円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 152,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 171,000円 |
課税所得が4千万円以上の納税者にとって、税負担が171千円増加したとしてもさほど影響がないかもしれません。一方で、一般的な子育て世代が月額1万円の児童手当を受け取れば、税金の増加分より受け取れる額の方が大きいケースの方が多いでしょう。少子化対策の一環としては、所得控除を減らして給付を行うのは方向性として正しいのかもしれません。
なお、税制調査会の答申にある給与所得控除の縮小についても、所得控除ですから所得税率が高い人にとっては負担が重く、所得税率が低い人には軽い負担となりますが、完全な増税となります。
政府としてコロナ対策で多額の給付を行い、対策費などの負担もあったことから増税が予想されてきましたが、具体的な動きとして見え始めてきたようです。
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